『兵隊たちの陸軍史』

兵隊たちの陸軍史 (新潮文庫 (い-30-12))兵隊たちの陸軍史 (新潮文庫 (い-30-12))
(2008/07/29)
伊藤 桂一

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 サッカーはやはり弱かったし、野球もどうなるか。篠原から「喋んない方がいい」と言われた石井はヒールだけど、塚田はぶちゃむくれの顔がさらにくちゃくちゃになりとても可愛らしく、良くやった。ボルトはいずれ8秒台出すね。結構五輪に首っ丈になっている私です。

 一説によれば、アフリカ大陸で誕生した人類は、肉体的に劣る連中がどんどんとアフリカの地を離れ(追い出され)ていき、その強弱によって同心円的にそれぞれ定住したとも言われるが、とすれば極東の日本人は最弱だったのか? となってしまうのだが、百メートルの結果だけを見ると、その説に肯いてしまいたくなる。食い物で何とか挽回できないのかな?

 それはともかく、五輪閉幕後の中国、台湾に一週間ほど行く予定だが、そんな中、『兵隊たちの陸軍史』(新潮文庫)を読んだ。将軍たちや兵器たちの勇壮な軍事絵巻ではなく、一兵卒の目線から旧帝国陸軍の実相を丹念にまとめた良書である。やはりディテールには何かがある。終戦時、旧陸軍は中国大陸に二百万人(だったかな?)もいたのだが、そこでの中国人たちを巻き込んだ混乱と生の真実は、とても興味深かった。戦場は、とても奇奇怪怪かつ複雑で、そして当たり前だが惨いものである。ノンフィクションの主テーマの一つが戦争だとしたら、今後書き手は、前掲書を無視することはできないだろう。

(あえて前出の説に従うとするならば、最弱だったかもしれない)日本人が、その規模において、歴史上中国大陸に攻め入った唯一の事例である日中戦争の傷跡は、現代の大陸で、何回か鳴り響く君が代をして、日中の関係史に何ほどかの進展を見せるであろうか。圧倒的な肉体の力と技による、つかの間のお祭りに、根が単細胞な私は一喜一憂している。

 五輪の最中、中核派全学連委員長である織田陽介さんのインタビューをした。詳細はいつもの通り『実話ナックルズ』にてお伝えするが、五輪とはまったく違った位相において、ロシアとグルジアの戦争や、大陸各地で起きているテロもそうだが、激変する客観情勢と、それに抗し、或いは便乗して行動を企図する者たちはやはり多数存在する。「人類はどこまで速く走れるのか!」と絶叫するアナウンサーとそれに熱狂する私たちは、やはり、間抜けだろうか。 

 まあ、間抜けなりに、公式の史実に載らない個的世界史を覗きこんでこようと思っている。表と裏の、その裂け目を生きる人々の個体史が、一瞬間、全体史と交錯しスパークする、その恍惚は、ボルトと違って百メートルを12秒台でしか走れなかった私にとって、追い求めるべきテーマのような気がする。メダリストたちの追い求める世界記録というテーマは、やはり私たちには無縁であり、私たちは個々の生をただ地道につむぐ他ないのだろう。バイトとして会場の清掃に借り出された学生時代、その会場を開閉会式に人々の歓喜の中誇らしげに歩いていた、その以前から知り合っていたある五輪選手の女子の姿を見て、ただただ己の矮小さを確認するほか無かった私もまた、兵隊たちの一員である。当たり前だが、兵隊は、テレビにも映らないし、歴史にも残らない。そしてまた、元五輪選手の彼女もまた、今の生をただ紡いでいることだろう。

 う〜ん……、しんみりしてしまった。いかん、いかん。こんなかび臭い状況を打破するためにも、景気良くビールの栓を抜いてテレビのスィッチオン、お、ボルトがまた走っている。次は200Mと400Mか、頑張れボルト……。

 彼らの魅力と兵隊の現実の葛藤は、まだまだ私の中では続くようです……。

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職業 ノンフィクション・ライター。不眠気味で痔持ち。「ハードボイルド」と書いて「無感動」に痺れるタフ・ガイ三十路。ノーフューチャー。

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