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専門化力。

 先日、月刊誌『サイゾー』編集部で社長になっていた揖斐さんとお話した。揖斐さん、社長になっていたのです。私がライターになったばかりの時からお世話になっていた人なのですが、いやはや、メールの出し方から、取材のしかた、ヤバイ人との距離の取り方などいろいろ教えてもらったことを思い出す。イケメンで草食系なのに、なにか突然グサッと意地悪なことを言う御人です。「青年実業家じゃないですか!」。社長になっていた……。

 雑誌業界のこと、いろいろ話を聞いた。厳しい状況の中、弱冠35歳で出版社社長に就任、編集長時代とは、やはり違う感じになったように思った。「雑誌は編集長のモノ」とはよく言われるが、経営の全責任を持つ編集長兼社長のプレッシャーは並み大抵のものではないはずだ。ネット版『サイゾー』と合わせて社員約20人を食わせているわけだ。素直に凄いなぁと感じ入ってしまった。

 しかし、原稿料が……。とはいえ、現況を聞いていると、それも致し方ないように思われてしまう。もはや、原稿は売る時代から買う時代へ、みたいなことになっているのかもしれない。状況認識を新たにした次第です。

 大資本のローラーブレードに対して、小資本がいかに対抗するか。圧倒的な単一化圧力に抗しうるバラエティとは何か、よく考える。たとえばお店の経営にしてもそうだ。ビール一杯50円で出す店があるという。これはもちろん儲け度外視である。目的は何か? 周辺店の駆逐である。こんな値段設定に勝てるわけがなく、かくして街は単一化してしまう。私は薬屋の息子だが、廃業の原因の一つは、巨大ドラッグストアの出現だと思っている。生き残りのための多様化、専門化は必須であり、またますます先鋭化していく。

 今、街にはさまざまなコンセプト系のお店がある。しかし少し注意深く見ればすぐに分かることだが、2,3年でつぶれてしまうのがほとんだ。その倒産率は極めて高く、要は、時間をかけて貯めこんだ金と体力を、その期間に食いつぶすことになってしまっているわけだ。「やりたいこと」「夢」の多くの残骸は、やはり無残である。潰してしまってもまだ「やりたいこと」をやれる、それだけでも今は、まだ余裕があるということかもしれないが、とにかく継続することはとても難しい。重要なのは、継続である。もちろん無理をしても仕方がないが、無理せず継続させる発想力がなければ、生き残りは不可能なのだ。

 少し前、映画のプロデューサーM氏と構成作家O氏と酒を飲んだが、彼らもまた「やりたいこと」しかやらない(やれない)人たちだった。彼らと深酒しまくってしまったが、「死んでもいい!」を連呼するの見て、ああ、この人たち死ぬな、と思った。でも、ある意味清々しい。

 昔、全共闘だったか「一点突破、全面展開」という言葉が流行った。戦術的な意味合いで、古ぼけた左翼おじさんがこれを言うと、もう首を絞めたくなるが、考えようによってはこれは悪くない言葉だと、私はずっと思っていた。「そぎ落とす」こと。地味で迂遠に見えるかもしれないが、案外これが近道だったのではないかと思う。オンリーワンの専門化力。いつの間にかPHP出版みたいなことを書いてしまっているが、そういうことなんだろうと思う。

 出版社の今年のボーナスは、大手を含めてその多くが大幅削減と聞く。その中で、私のよく知るある中堅出版社は、7カ月分の支給だったと聞いた。高い商品価値を維持できたということを示している。厳しいが、不況は自分の力の現状を強制的にかつ冷徹に見つめさせてくれる。自分はいかにすべきか、暮れも押し迫っている中、考え込んでいる。

  

 









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職業 ノンフィクション・ライター。ハードボイルドに疲れてきた三十路後半男。枯れていくばかりの人生を楽しむことにします。

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